2019-03-24

テリファイド


2017年制作のアルゼンチン映画。言語はスペイン語で恐怖演出と音響効果が素晴らしい心霊ホラーの快作だ。

ストーリー
ブエノスアイレス郊外の閑静な住宅地に住むウォルターは、連日起こるポルターガイスト現象に悩まされていた。彼の家では夜中に家具が動いたり電灯が点滅したり何者かの影が見え隠れしたりするのだ。

ウォルターは証拠を残すためビデオカメラをセットするが録画された画像にはベッドの側に佇む異形の者の姿が写っていた。彼は心霊研究家のアルブレック女史に証拠のテープを送るがその後姿を消してしまう。

時を同じくしてウォルター家の斜め向かいに住むアリシアの幼い息子が家の前の道路でバスに轢かれ死亡する。そしてその4日後、埋葬した死体が墓から這い出て歩いたとしか思えない状況で家に戻って来たのだ。

アリシアの友人で警察本部長のフネスは元同僚で検視官をしていたマリオに助けを乞う。またこの事件に誘われたようにアルブレック女史がウォルター家を訪ねて来る。そして今度はウォルター家の隣に住むジュアンの妻クララが奇怪な死を遂げる。

マリオとアルブレック、そして彼女の同僚のロゼントックの三人はジュアン家に機材を持ち込み怪奇現象の調査を開始する。フネス本部長も加わりまずはウォルター家から調査を始めるが異形の者は3軒の家を移動し次々に彼らの命を奪う。

残ったフネスは心臓発作に襲われながらも脱出を試みるのだが。

レビュー
ストーリーは一応時系列通りに書いたのだが、映画ではジュアンの妻クララが惨死するシーンが冒頭に配置されている。開始早々のこのショック効果は抜群で一気に引き込まれてしまう。

異形の者の姿はジャケット画のイメージ通りだが、背が高く灰色の肌で軟体動物のように身体が折れ曲がる。彼らの特徴は明るい光の中では姿が見えず暗い環境なら目視できる点だ。しかしそれ程厳密な訳ではなく見る角度によって見えたり見えなかったりする。

またアルブレックは首を折られマリオは目を潰されて死ぬのだが何故か墓場から戻ったアリシアの息子のように蘇ってフネスに迫って来る。異形の者の正体・目的、死者がなぜ蘇るのか・・・これらについて説明不足なのが残念な点だ。

またロゼントックの消息が最後に分かるのだが、この演出も取って付けたようで理解に苦しむ。つまり脚本面で謎を解明せず投げっぱなしの部分が多いのがマイナス要素だろう。しかし、それを補って余りあるのが映像+音響の相乗効果がもたらす恐怖演出の見事さだ。

気を抜いていると視覚と聴覚の両方に強烈なショックを与えるあれやこれやの仕掛けが突然飛び出す。正にホラーの醍醐味だ。これは中田秀夫監督の代表作「リング」の手法に似ているかもしれない。

「闇=異空間」「やつらは血を好む」などのキーワードから謎解きに頭を巡らすのも一興だが、この作品、ギレルモ・デル・トロによりハリウッドリメイクが実現するらしい。脚本面を強化して映像・音響とのバランスが取れたより面白い作品の完成を心待ちにしたい。