2012年製作のカナダ映画。トロント・アフター・ダーク映画祭他世界各地の映画祭で絶賛されたスプラッタ・ホラーだ。
ストーリー
両親、兄のスティーヴと暮らしているマーティはホラーが大好きな11歳の少年。ホラービデオを観たりホラーコミック風の絵を描くのが日課だ。しかし彼は毎日学校で黒人少年とその取り巻きにいじめられ嫌な思いをしていた。
そんなマーティの隠れた趣味は家族の秘密を探る事だ。家人が留守の時父親のヌード雑誌や母親の手紙を見つけてはそれらを眺めて過ごす。だが兄のスティーヴは特別だった。兄は自室のクローゼットに人間の生首を隠していたのだ。
マーティはバッグに入った生首を取り出して手に取り無表情で見つめる。スティーヴに見つかったら大変な事になるが、兄はぶっきらぼうでも案外弟思いでお勧めのホラービデオを貸してくれる。しかし兄と父の仲は険悪そのものだった。
ある夜マーティは兄の部屋から「ヘッドレス」というタイトルのビデオを持ち出し友達と鑑賞する。そのビデオに出てくる殺人鬼は女性の頭部を切断し変態行為に耽るのだ。彼は兄がビデオの殺人鬼と同じ事をしている姿を想像し恐ろしくなる。
ビテオを観ながら震える姿を友達に見られ「弱虫」と茶化されたマーティは、友達に一泡吹かせようと兄の部屋から例のバッグを持ってくる。そして友達が笑いながら開けたバッグにはマーティをいつもいじめる黒人少年の首が入っていた。
レビュー
ストーリーに書いた内容は映画の中盤あたりまでになる。マーティがバッグを部屋から持ち出した事を知ったスティーヴは「人に話せば友達もお前も殺す」と怒り狂う。しかし怯える弟を兄は何故か許し二人はまるで同志のような関係になる。
マーティはいじめっ子を殺してくれたスティーヴに感謝し、スティーブはマーティには絶対危害を加えないと約束する。家族の中ではぐれ物の二人は奇妙な兄弟愛で結ばれマーティは他のいじめっ子を撃退する心の強さまで手に入れる。
しかしスティーヴの正体はマーティが危惧した通りの変態殺人鬼だった。暴走したスティーヴは両親に危害を加え止めようとするマーティを拘束する。そして「お前には絶対手を出さない」と言い残して信じがたい異常行為に及ぶのだ。
監督のスコット・シャーマーは本作をわずか8000ドルの制作費で完成させたらしい。確かに起用している俳優は無名だし撮影もビデオ撮りで一見して低予算なのが分かる。だが脚本の奇抜さと映像センスの良さで不足分をカバーしている。
主役のマーティ役はギャビン・ブラウン。この少年はアップになった表情がとても良い。演技も上手いし将来有望だ。スティーヴ役はイーサン・フィルベック。この俳優の存在感で作品の不気味さが増しており暴走時のキレた演技は凄まじい。
劇中で登場する「ヘッドレス」というビデオだがこれがまた凄い内容だ。頭部切断場面の表現だけでなく殺人鬼の変態性が強烈で正直トラウマになりそうだ。この内容なら資質のある人間が洗脳されてもおかしくないと思わせる。
そしてラストのワンカットが止めの一撃となりこの恐るべきスプラッタ・ホラーは幕を下ろす。この作品は近年稀に見る残酷度とインモラルさで観る者全てを圧倒する事は間違いないだろう。