2019-04-28

WHO'S WATCHING OLIVER


2017年制作のアメリカ・タイ合作映画。日本未公開でパッケージソフトも当然発売されていない。輸入盤BD・DVDも個人輸入でしか入手不可能なヤバイ作品だ。

ストーリー
オリバーは30歳前後と思われる長身の青年だ。現在旅行でタイに滞在していて一軒家を借りて住んでいる。いつもオールバックに黒縁メガネ、Yシャツにネクタイ、スラックスに革靴と同じ格好をしている。そしてあらゆる面で病的に几帳面だ。

彼の一日のスケジュールは決まっている。まず朝6時30分に薬を2錠飲みパソコンを起動してアメリカに住む母親とビデオ通話をする。向こうは午後1時だ。母親は70歳位だろうか、派手な化粧をして酒を飲みながら息子と他愛もない会話をする。

10時になるとシャワーを浴びて身繕いをしアナログカメラを首から下げて外出する。タイの観光名所を少し見てから大きい公園に行き、ベンチに座って日没までボーっと過ごす。この公園、大きな遊具施設が整った観光客や家族向けの立派なものだ。

オリバーは日が暮れるとバーに行きドラッグがあると言って女を誘い借りている家に連れ込む。女がクスリで前後不覚に陥ると服を脱がせて机にうつ伏せに縛り付け、何とパソコンを起動して画面を女の方に向け母親とビデオ通話を始めるのだ。

母親は酒を片手に女を口汚く罵倒しオリバーに犯して首を刃物で切り裂き殺すよう命じる。母親の命令に従い女の首を切り裂くオリバー。それをパソコン越しに見て狂気乱舞する異常な老女。満足した母親は彼に後始末を命じて通話を切る。

オリバーは死んだ女に詫びながら肉屋が使う前掛けをして浴室で身体をバラバラに解体する。次にガスマスクに防護服を着て戸外にあるドラム缶に硫酸を注ぎバラバラ死体を溶かすのだ。骨だけになったら河に捨てて母親が指示した後始末は完了だ。

ある日、オリバーは公園のベンチで彼の隣に座った女性ソフィアと不思議にも打ち解け、互いに磁石が引き付け合うように相思相愛の仲になってしまう。母親に今まで通り従うか彼女と別の人生に踏み出すか、彼は初めて経験する事態に苦しむことになる。

レビュー
オリバーの外見は最初に書いた通りだが所作に関しては見るからにアブナイ人物だ。いつも左右をキョロキョロ、独り言を言いながらウロウロ、話し方も言葉の繰り返しが多く受け口が目立つ。薬を飲まないと幻覚を見るなど精神疾患があるようだ。

実は彼は幼少の頃父親に虐待され背中に大火傷を負わされている。挙げ句の果てに母親が父親を殺害して以来、彼女の言いなりに生きてきた彼の心は少年のまま。気が狂った母親の殺人願望を息子が叶えている訳だから笑えないブラックジョークである。

そんなオリバーが恋をしたから大変だ。彼とソフィアの公園デートはまるで昔の高校生のように甘くて気恥ずかしい。彼女は幼少時からカルト教団に洗脳され辛い仕打ちを受けてきたらしい。オリバーに惹かれたのは彼に自分の姿を重ねたからかも知れない。

恋をしてオメカシをするようになった息子の変化に気付かない母親ではない。オリバーから恋人のことを聞き出し早速仲を引き裂こうとする。おまえの悪行を彼女が知ったらどうするんだと勝ち誇るが、意外にもソフィアはオリバーの全てを受け入れる。

ラストに母親の罵倒を無視してパソコンを閉じる2人。血塗れ被害者の死体を跨いで抱き合うどこかズレた2人に笑いながらめでたしめでたしと言いたいところだが、エンドクレジットは最後まで観なくては駄目なのだ。くれぐれもお忘れなく。

オリバー役はラッセル・ジェフリー・バンクス。良くあのキャラクターを演じきったと驚嘆するばかりだ。バーでのイカレた笑い方に注目。ソフィア役はサラ・マラクル・レイン。タイ出身の美人女優で本作では大胆なヌードも披露している。

母親役はMargaret Rocheという方。プロフィールが良く分からないが、ダーティワード(cunt・assholeなど)を連発し「ブレイン・デッド」のライオネルのママを彷彿とさせる怪女優だった。いや遥かに超えていると思う。

ところで死体の解体など過激な設定はあるのだが、特殊メイクによる人体の切断面や内臓などは使われていない。その点では直接のグロ描写は皆無に近い。全裸美女は多数出てくるが全て血塗れ死体だから色気を期待してはいけない。

最後に本作の視聴方法だが「Tubi」という登録不要・完全無料で映画視聴できる米国のサイトがあり、ホラーのジャンル内に本作がUpされている。日本語字幕はないがCCで英語字幕が出るので問題なく視聴できると思う。