2019-03-16

ラプチャー -破裂-


2016年制作のアメリカ映画。「破裂」というサブタイトルからスプラッター系のホラーを想像したが、予想の斜め上を行く展開が面白い作品だ。

ストーリー
レネーは息子のエヴァンと暮らすシングルマザー。スカイダイビングに挑戦する行動派だが蜘蛛が大嫌いで、すぐキレる性格のエヴァンに不安を覚えている。ある週末、彼女は離婚した夫の元へ車で息子を送り届けるが戻る途中交通量の少ない場所でタイヤがパンクする。

運良く後続のバンに乗ったドライバーが手助けを申し出てくれるが、これはレネーを拉致する為に周到に練られた罠だった。彼女はスタンガンで気絶させられバンに押し込まれて連れ去られる。

到着した場所は何かの研究をしている施設のように見えた。建物の入口付近にはストレッチャーに寝かされた若い黒人男性がいて「G10-12X」を忘れるなと言う。そして研究員らしき男の手でどこかへ運ばれて行った。

レネーはストレッチャーに縛られ個室に監禁される。また彼女以外にも監禁されている人が複数いるらしく悲鳴や叫び声が聞こえてくる。研究員たちが入れ替わり問診や注射をしに来るが、彼女の質問に対しては意味不明の回答しか返って来ない。

別室に運ばれたレネーは固定した腕の上に毒蜘蛛を乗せられる彼女にとって究極とも言える拷問を受ける。何とか恐怖に耐えた彼女は個屋に戻されるが隠し持っていたカッターで手枷を切ることに成功するのだ。

換気パネルを外して通気口に潜り込み別の部屋を移動しながら施設から脱出する方法を必死で探るレネーだが・・・。

レビュー
★ネタばれしているのでご注意ください。
果たしてこの研究施設で何の実験が行われているのか?。その点がこの作品の肝な訳だが、「G10-12X」とは人間の染色体にある遺伝子コードのことで、このシーケンスが破裂すると視力や聴力など潜在能力が飛躍的に高まった何者かに進化すると言うのだ。

ただ誰もが破裂する訳ではなくその資質を備えた人間を探し出し究極の恐怖を与える必要がある。監禁された被験者達はそれぞれが最も恐れる生物との接触やトラウマの追体験を強いられ、その殆どが成功することなく死んだり記憶を消されて社会に戻される。

特にレネーは破裂の確率が高い被験者として研究者達に注目されていた。さてこの研究者集団、性別や年齢・人種はバラバラで皆一様に感情の起伏がない。つまり彼らは人間を超えた何者かなのだ。その特徴は目にあり黒目が水平に3つ並んでいる。

これでも十分気味が悪いが(普段はコンタクトで隠している)、それが本来の姿なのか顔面が崩壊して目が垂れ下がり恐ろしい形相に変貌する。そしてレネーも最後には頭部を透明なマスクで密閉され顔面を多数の蜘蛛に這い回られて破裂してしまう。

俳優陣だが、レネー役はノオミ・ラパス、研究所長役にピーター・ストーメアが扮している。ノオミ・ラパスはタンクトップ姿で研究所狭しと逃げ回るが二の腕の筋肉が逞しい。研究員を演じたケリー・ビシェと言う女優さんもなかなか魅力的だった。

彼らの目的だが人類を駆逐し新しい世界を作ることらしい。元は人間だったのかそれとも宇宙やって来たのかはっきりと分からない点が意味深だ。また古びた研究所内部の赤く塗られた壁やオレンジの照明がB級感あふれる映像感覚を生んでいる点も評価したい。