2019-05-04

喰らう家


2015年制作のアメリカ映画。いわゆる幽霊屋敷物と呼ばれるジャンルだが残酷描写が飛び抜けて凄いパワフルなホラー作品だ。

ストーリー
2ヶ月前に息子のボビーを亡くした初老の夫婦ポールとアニーは、雪深い片田舎の町に引越して来た。住む家は30年間空き家だった町外れの古い一軒家だ。近隣に住むデイヴによると19世紀に葬儀社を営んでいたダグマー一家が最初の持ち主だが、死体の横流しの疑いで街を追われ後に自殺したらしい。

アニーは引越してすぐに家の中で亡き息子ボビーの存在を感じていた。特にボイラーがある老朽化が激しい地下室に何かが居るのは確実に思えた。そこでボビーのルームメイトだったハリー、彼の両親ジェイコブとメイに来てもらうことに。メイは霊媒師でジャイコブと一緒に交霊術を生業にしていたのだ。

ジャイコブ夫妻が先に到着したのでハリーと彼女のダナを待たず4人で町のレストランへ行くことになった。彼らが店に入ると客達が異様なまでに好奇の目で見る。その頃ハリーとダナが家に到着するがいきなり地下室でハリーが全身黒焦げの霊に惨殺される。車で逃げたダナも霊に内蔵を抉られ惨死した。

翌日、ハリー達のことは皆あまり気に留めずアニーとメイは街に買い物に出かけた。その隙にジェイコブは交霊会をやろうと言い出す。前夜悪夢を見たポールも賛成し儀式を開始するが、ジェイコブが何者かの霊に取り憑かれ暴れ始めた。ポールは必死にロープで彼を椅子に縛り付ける。

帰宅したメイが彼を正気に戻そうとするがジェイコブはダグマーの言葉を話し始める。「街の人間がこの家を建てた時眠っていた魔物を掘り起こし解き放たれた闇が生贄を求めた。その生贄にされ焼かれたのが我々だ。街の人間に騙されるな!。」そしてジェイコブは自らの目を抉って息絶える。

3人は家から逃げようとするが玄関を開けたメイの頭がショットガンで吹き飛ばされた。デイヴの仕業だ。次々に家に侵入してくる町の人間は次々とダグマー一家の霊に惨殺されていく。最後に残ったデイヴもダグマーに頭部を潰されて死んだ。しかし彼らはポールとアニーには何もせず消えていく。

その時アニーには「怖がらないで」という息子ボビーの声が微かに響いていた。そしてポールも地下室の中に何が見えたのか「やぁ、ボビー」と笑みを漏らすのだった。

レビュー
★ネタバレを含みますのでご注意ください!
ストーリーは割と分かりやすくエントクレジットでは今までの経緯が新聞記事によって紹介される。この家は1859年に死体置き場の上に町民の手で建てられたらしい。この家の最初の住人がダグマー一家(ダグマーとその息子・娘の3人)で彼らはそこから掘り起こされた魔物の手で焼き殺された。

魔物は30年ごとに生贄を求め、それが叶わぬと町に干ばつや疫病・家畜の大量死などの厄災をもたらした。だから町民は30年に一度この家を格安で貸し出す広告を新聞に載せる。入居した一家の死で自分たちは何事もなく生きられるからだ。そこに何も知らずに越してきたのがポール達だった。

デイヴが初めて訪ねて来た時ポール達が2週間前に引越して来たことに驚く発言をしている。町のレストランの客も何故まだ彼らが生きているのか不思議に思って凝視していたようだ。ダグマーは家に入った者は容赦なく殺す筈だ。ハリーもダナも殺された。では何故ポールとアニーは襲われないのか。

私見だがやはりこの家には死んだ息子ボビーの霊がいて両親を守っていたのではないか。残念ながらハリーはダナに夢中で友人の死を悼んでいる様子はない。ジェイコブとメイは「この家にボビーの霊はいない。」と彼の存在すら否定している。やはり両親が息子を思い信じる心は他人とは違うのだ。

またダグマー一家は生贄にされた側であって魔物ではない。今は魔物の手下に成り下がり家の住人を惨殺し生贄とする側になってしまった。彼らが憎むのは1859年以来延々と血塗られたしきたりを守ってきた町民だろう。彼らはボビーの霊によって良き時代の一家の姿を思い出したのかも知れない。

さて俳優陣だが、アニー役はバーバラ・クランプトン。「死霊のしたたり」等スチュアート・ゴードン監督作の常連で殆どノーメイクなのに昔とあまり変わらない。ファンとしては嬉しい限りだ。ジェイコブ役は映画監督・俳優もこなす個性派ラリー・フェセンデン。憑依された時の演技がさすが上手い。

残酷描写に関しては冒頭に書いた通り力が入っている。CGよりも特殊メイクのアナログ感を重視しているようで人体破壊の表現には適していると思う。特にデイヴの頭部破壊シーンはこの作品の白眉と言って良い出来だった。ダグマーの黒焦げ振りもやはりアナログ感があって素晴らしい。

飛び抜けて高い評価は付けにくいが幽霊物=CG描写という流行りを敢えてぶち壊したのは新鮮だと感じた。グロいのが好きなホラー映画ファンにはお勧めしたい。加えてバーバラ・クランプトンのファンなら間違いなく必見だ。もちろん「サプライズ」もお観逃しなく!。