2017-02-12

ディスコード


2012年製作のアメリカ映画。心霊ホラーと思って観ていると意外な展開へとシフトするある意味斬新で面白い作品だ。

ストーリー
幼い頃から母親に厳しくしつけられたアニーは15歳で家を飛び出して以来実家には全く寄り付いていない。その母親が亡くなり姉のニコールから葬儀に参列するよう連絡があるのだが、母親の遺品整理で実家にいたニコールが忽然と姿を消してしまう。

姉の行方が気になり実家に戻ったアニーだが、深夜に物音がして目覚めると冷蔵庫の扉が開けっ放しになっていたり食べ物が床に落ちていたりする。母親の葬儀の日に一人では不安なのでいとこのリズとニコールの娘エヴァに実家に泊まって貰うことにした。

すると今度は深夜にリズが行方不明となり不可解な心霊現象が起きる。アニーが姿の見えない何かに身体を引っ張られたり突き飛ばされたりするのだ。アニーはエヴァを連れて警察に駆け込みむが刑事のビルは彼女の話を全然信じてくれない。

アニーは実家を売却するための書類の中にあった見取図を見てある部屋の扉が板で覆われ隠されている事実に気付く。彼女が刑事のビルと共にその隠し部屋の中を調べてみると、家の各部屋が覗けるように壁に小さな穴がいくつも開けられていた。

アニーは家の中に霊的な存在がいると確信し霊感がある高校時代の同級生スティービーに調査を依頼する。彼女は隠し部屋の中で急に苦しみながら「ジューダス」と叫び始める。そしてアニーは花柄のワンピースを着た女性の霊をはっきりと目撃する。

果たしてこの女性は何者なのか?。アニーのスマホに突然映し出された地図がこの女性の正体を知る手がかりとなる。そして「ジューダス」とは一体何なのか?。アニーが辿り着いた先には恐るべき殺人鬼の存在と母親の知られざる秘密があった。

レビュー
★モロにネタばれしてますのでご注意ください!
この作品の特徴は心霊ホラーにサイコ・キラーの要素をプラスした点だ。映画の中盤頃までは様々な心霊現象=電灯の点滅や目に見えない力などの描写が多いため、この作品は霊に襲われる心霊ホラーなんだなと印象付けられる。

しかし霊自らの訴え(スマホの地図)や霊能者・スティービーの導きで、この心霊現象はアニーを攻撃するものではなく霊が真実を伝えようとしていることが分かってくる。霊とはすなわち花柄のワンピースの女性ジェニファーだ。

「ジューダス」とはこの地方で20年ほど前に起きた連続婦女誘拐殺人事件の犯人のこと。犯人はまだ捕まっておらずジェニファーは事件最後の被害者だった。ではなぜジェニファーの霊はアニーの実家に現れるのだろうか?。

実はアニーの母親ジュディには兄がいてアニーとニコールの伯父にあたるこの人物チャールズこそがジューダスの正体だった。ジュディは兄チャールズの悪事を知ったうえで隠し部屋の中に彼をかくまい続けていたのだ。

チャールズをかくまい始めたのはおそらくアニーとニコールが実家を出た後からで、母親の葬儀のため久しぶりに実家に戻ったニコールがまず彼の餌食となり運悪くリズも犠牲になった。そして刑事のビルもチャールズの刃に倒されてしまう。

この中盤以降の展開をどう感じるかで作品の評価が大きく変わってくると思う。超常的な心霊現象に翻弄される展開からいきなり現実的なサイコ・キラーとの対決にシフトするので、そのギャップに違和感を覚える方も多いのではないだろうか。

しかしチャールズとの対決時にジェニファーの霊がアニーに力を貸しているシーンがちゃんと描かれているので、ヒロインと殺人鬼との対決に霊の復讐を絡めた展開はなかなか新鮮で評価できる点だと感じた。

アニー役はケイティ・ロッツでタンク・トップがらのぞく二の腕の太さが頼もしい。刑事・ビル役は「スターシップ・トルーパーズ」でニコを演じたキャスパー・ヴァン・ディーンが好演している。

ニコラス・マッカーシー監督の演出は細かい部分にまで気を使っていて丁寧な描写を心がけていることが伝わってくる。伏線の配置やその回収の仕方も見事で特に2回鑑賞すると改めてその緻密さに気付き驚かされる。

思わず唸ってしまったのはビルが殺害された際に息絶えた瞬間彼の瞳孔が開くのだが、アニーに眉間を銃弾で打ち抜かれたチャールズの瞳孔は開かなかったことだ。この部分は非常に意味深な最後のカットに繋がっているので注意して観て欲しい。