2015-09-12

ババドック 暗闇の魔物


2014年製作のオーストラリア映画。絵本の中から正体不明の怪物が出現するホラー・ファンタジーだがサスペンス的要素も感じられる作品だ。

ストーリー
6才の一人息子・サミュエルと暮らすシングルマザーのアメリアは、交通事故で夫を失った哀しみと個性が強すぎて学校で問題児扱いされている息子の育児の悩みで心身共に疲れ果てていた。

ある夜サミュエルが本棚から持ってきた「ミスター・ババドック」という名の絵本をアメリアが読み聞かせる。絵本に描かれたババドックは黒いハットにマントという格好で顔は真っ黒。そして顔には白くて丸い両目と大きい口があるだけだ。

「バ、バ、バ、ドック、ドック、ドック」と言いながら現れて人間に憑依し人間を凶暴化して家族を殺させる恐ろしい存在。そしてババドックからは決して逃れる事ができない。

恐ろしくなったアメリアは絵本を処分するが時既に遅く親子が住む一軒家にはババドックの不気味な黒い影が忍び寄っていた。ついにアメリアがババドックに憑依されて狂気的な言動を取り始め最後にはサミュエルを殺そうとするのだが・・・。

レビュー
この作品を高く評価したくなる要因の一つは間違いなくアメリア役エシー・デイヴィスの演技力だと思う。息子を愛しているが同時に言う事を聞かない息子が疎ましい。母親である前に一人の女であり亡くなった夫を思いながら人肌が恋しくなる。そんな複雑な思いが混ざり合った微妙な心の動きを見事な表情と演技で見せてくれる。

また、この作品は女性であるジェニファー・ケントが監督しているので、同姓ならではの感性で女性の心のひだをすくい取るような巧みな演出が出来たとも言えるだろう。同時に狂気に支配された女性の恐ろしさを凄まじいリアリティで見せ付ける容赦の無い演出も出来てしまうのだ。

最後までその正体が分からないババドックだが、ゴーストやクリーチャーには無い得体の知れない不気味さがあった。そしてラストのオチもなかなか考えさせられるものだった。ファンタジー系で正真正銘怖いホラーが観たい人にお勧めの傑作だ。