2015-09-23

ノーウェイ・アップ


2005年製作のアメリカ映画。スティーブン・スピルバーグ監督の傑作「激突」を思い起こさせるサスペンスだ。

ストーリー
証券会社に勤めるトムは上司のギャヴィンにそそのかされて会社の金を横領し不正送金する手助けをしてしまう。送金を終えて会社の地下駐車場に降りてきた二人だが、トムは良心の呵責に耐えかねて「この件から手を引く」とギャヴィンに訴える。怒ったギャヴィンは「絶対抜けられないぞ」と脅し文句を残し立ち去って行った。

その直後不気味な黒いピックアップトラックが現れてトムを追いかけ始める。階段への扉はロックされエレベーターは動かない。地下5階の駐車場から上層に向けて逃げるトムをサーチライトを照らしながら追い立てるトラックの目的は?そしてドライバーは一体誰なのか・・・。

レビュー
登場人物は限られているのだがギャヴィンとトムの妻・モリーが浮気をしているらしいとか、トムの同僚で浮気相手のレベッカの恋人が駐車場の管理人・ビクターであるとか、何やら疑わしい人物ばかりで主人公のトムと同じように観ている方も犯人が誰なのか懸命に考える設定になっている。

明らかに怪しいギャヴィンやビクターが殺されてしまい、いよいよ混迷の度合いは増すのだがついに正体を表した犯人は意外な人物だった。しかし余りにも意外過ぎて犯行の動機が弱いのがマイナスになっている。正直言って肩透かしを喰らったような残念感が漂ってしまった。

この作品の主役はトラックだと言っても過言ではない。その車体は真っ黒でフロント・バンパーは鋼鉄製、金網付きスモーク・ガラスとルーフに付いた4台の強力なライト、左側面に付いたリモート式のサーチ・ライトなど、不気味な上に強固な車体と優れた探査能力を持つ実戦的なデザインが素晴らしかった。

ラストのオチを含めて若干の尻すぼみ感は否めないが、緊張感とスピード感溢れるアクション演出は一見の価値があると思う。地下駐車場という閉鎖空間も舞台設定としては良く考えられているので、追い詰められ系のサスペンス・アクションが好きな人なら結構楽しめる秀作と言って良いだろう。