2015-09-27

悪魔は誰だ


2013年製作の韓国映画。本格的サスペンスとしてかなり完成度が高く本格推理小説を思わせるトリックを駆使した作品だ。

ストーリー
15年前に身代金目的の誘拐犯に娘を殺害された母親・ハギョンは、担当のチョンホ刑事から間もなく事件が時効を迎える事を知らされる。そんな時犯人のある行動からチョンホは後一歩と言う所まで犯人に迫るのだが結局逃げられてしまい虚しく時効を迎える。

その後間もなく新たに幼女誘拐事件が発生し、その手口が身代金の受渡し方法を含めて15年前の誘拐事件と酷似している事実をチョンホは知る。今度こそ犯人を逮捕する為彼は執念で捜査に加わるが事件は予想外の展開を見せ始める。

そして彼は意外な真犯人に辿り着くのだった。

レビュー
この作品の特徴は本格推理小説の手法である叙述トリックを上手く演出に使用している点だ。

何気なく観ていると直ぐには気付かないと思うがチョン・グンソプ監督は実に大胆なトリックを仕掛けている。慎重に張られた伏線と巧妙な編集による思い込みを利用して、二度目に観たときに思わず「なるほど」と唸るようなトリックになっているのだ。

俳優は母親のハギョン役がオム・ジョンファ、チョンホ刑事役がキム・サンギョン。キム・サンギョンは傑作「殺人の追憶」でも刑事役を演じていたが実直な人柄の刑事が良く似合う役者だと思った。

また、オム・ジョンファの演技も素晴らしく特に娘の亡骸を抱いて号泣するシーンは涙無しには観られない。その絶叫はあまりに切なくて子供を持つ親なら胸が締め付けられる思いがする事だろう。

真犯人が分かるタイミングもベストと言えるものだし同時に15年前の誘拐事件の謎が解けるカタルシスも味わえる。おそらく今の日本映画にはこれ程密度が濃いサスペンス・ドラマを撮る力は無いと思う。

日本の映画監督は素直に韓国映画から学ぶべきではないかと感じた。ラスト・シーンも思いっきり泣かせてくれて正に韓国映画の真骨頂が味わえる傑作だ。