2015-11-15

スモーク


2012年製作のアメリカ映画。アルバトロス配給でB級色が漂うが予想したよりまとまりの良いホラー・ファンタジーだ。

ストーリー
看護師のアナは深夜バスの中で同郷で漫画家のフレディという男と知り合う。あまり会話が弾まない二人だが突如バスに強い衝撃が走り二人は意識を失った。

アナとフレディは自宅で目を覚ますが街には人間の姿は無く動物や虫等もいない。近所に住む二人が合流して街を探索すると巨大な煙の壁が外側から街の中心目掛けて迫って来ることに気付く。

意を決して煙の壁に入ったフレディは、中に鎖に繋がれたモンスターがいること、中央に鍵穴がある謎の扉があることを発見する。どうやら扉を開けて進めばこの世界から脱出できそうなのだが、鍵がどこにあるのか分からない上にモンスターが扉を守っている。

煙の進む速度から計算すると煙の壁は3日で町を覆いつくしてしまう。果たして二人はこの街から無事脱出することができるのか・・・。

レビュー
★ここからネタばれあります!
この作品は異次元世界や心霊現象とは違うかなり分かり易い設定が基本になっている。それは事故に遭ったアナが昏睡状態の中で見る幻覚が物語の舞台になっているということだ。その幻覚に人格を持ったフレディが現れアナの手助けをするのがこの作品の特徴なのだ。

誰もいない街が突如過去にタイムスリップしたように人で溢れるシーンがあるのだが、これは少女時代のアナの記憶を彼女が追体験している場面。そこには少年のフレディも現れ過去に偶然二人が辛い体験を共有していた事実が分かり二人の絆は急激に深まっていく。

また、アナが勤務する病院の監視モニターから入院中のアナの命があと3日という情報を得た二人が、モンスターを避けながら扉の鍵を探して悪戦苦闘するあたりがこの作品の山場になる。つまり煙の接近はアナの死へのカウントダウンだったのだ。

映像で面白いと感じたのは幻覚世界は全体にブルーっぽい暗い画面にし、過去の記憶や現実は暖色系の明るい画面にしている点だ。これはなかなか良いアイデアでそのコントラストがメリハリのある進行を助けていると思った。

幻覚世界に出現するモンスターだがこれもアナの記憶と関係のあるものが元になっている。オールCGのモンスターは「バイオハザード」シリーズのリッカーにそっくり。それなりにお金を掛けているようで動きや皮膚感等は決して悪くない出来だった。

かなりストーリーを暴露してしまったが、過大な期待を持たずホラー・ファンタジーにラブストーリーが合体した映画として観ると意外に良く出来たまとまりのある作品だと思う。主演の二人への感情移入もすんなりと出来るしラストもハッピー・エンドで心が和んだ。