2011年製作のアメリカ映画。「ホステル」のイーライ・ロス監督が絶賛したらしい幽霊屋敷を舞台にしたホラーだ。
ストーリー
ニューイングランドにある古びた廃業寸前のホテル。アルバイトのフロント係はオタッキーな中年男のルークと元気で好奇心旺盛ながらドジな20代の女の子クレアの二人だ。ホテルのオーナーは商売をアルバイトに任せて長期旅行中といういい加減さだ。
実はこのホテル過去に結婚式当日に花婿に捨てられた花嫁が自殺しその亡霊が今も彷徨っているとの噂が絶えない幽霊屋敷なのだ。心霊オタクで実際にこのホテルで霊に遭遇したと自慢するルークを手伝って、クレアは心霊現象を記録しようと録音機材を持って深夜のホテルを探索する。
ホテルに滞在する客は元女優で霊媒師の中年女性とかつて新婚旅行でこのホテルに泊まった事があるやたら暗い老紳士のみ。クレアはホテル内を探索中にピアノの音や不審な物音を聞いて不安になり霊媒師の女性に助けを求めるが、既に霊はクレアに狙いを定めて確実に距離を縮めていた。
レビュー
この作品、あのイーライ・ロスが絶賛したのだからと過激な内容を期待すると完全に裏切られる。過激どころか幽霊屋敷物なのに霊がほとんど出てこないしホラー映画にしては全然怖くない。これは一体どうなってるんだとツッコミたくなる内容なのだ。
映画の前半から中盤にかけては何も現れず最終局面でやっと霊にご対面できるのだがはっきり言って全く怖くない。ではそれまでにジワジワと恐怖感を溜めるような演出をしているのかというとそんな事もない。ついにこれはホラーではなくごく普通のドラマなのだとの結論に達した。
そう思って観てみるとクレア役のサラ・パクストンはドジで健気でちょっとズレていて可愛いヒロインを好演しているし、相棒役のルークとの掛け合いもテンポが良く面白い。映像的にも1980年代頃の映画を彷彿とさせる妙に懐かしい感覚が随所に観られる。つまり映画の作法自体はしっかりしているのだ。
監督のタイ・ウェストはラブ・コメディを撮ると非常に良い作品に仕上げる人ではないかと思った。この作品も前~中盤にかけてはルークとクレアの人間関係の機微を上手く表現できている感じだ。特にサラ・パクストンのドジでちょい我儘なキャラクターはツボにハマると惚れてしまう。
総評を述べるとドラマとして観れば及第点だがホラーとしては落第だろう。つまりあまりお勧めできない作品なのだがクレア役のサラ・パクストンを観て欲しい気もする。