2016-01-10

デフロスト


2009年製作のアメリカ映画。ヴァル・キルマー主演の寄生虫パニック・ホラーと言うべきかジャンル分けが難しい珍品だ。

ストーリー
北極圏に近いカナダ北端の地で環境学者クルーペン博士の研究チームは地球温暖化の影響で急激に融けていく氷の調査を行っていた。そこで彼らは雪の中に埋まっている保存状態の良いマンモスの死骸を発見する。

マンモスの一部は北極グマとカラスに食べられていて、博士はマンモスをテントで覆ってその場に残し麻酔銃で眠らせた北極グマを近くの研究設備のあるベースキャンプに運んだ。

実はマンモスの体内には太古の時代に生息していた昆虫が寄生していて北極グマを介して研究員が寄生されてしまう。寄生された人間は発疹ができ皮膚が爛れて嘔吐を繰り返しながら死んでいく。

その頃博士の研究を手伝う為3人の学生と博士の娘エヴリンがヘリでベースキャンプに到着する。そこで出会った唯一の生残りである博士の助手ジェーンは「ごめん・・・行かせられない」とうわ言を言いながら死んでしまう。

行方の分からないクルーペン博士。研究員と同様に寄生中に襲われる学生達。パニックで仲間割れを起こしながら救助を待つ彼らに残酷な運命と驚愕の真実が待っていた。

レビュー
この作品、環境破壊がもたらす地球温暖化とそれを阻止したい科学者の葛藤と究極の選択がテーマになっていて着眼点はなかなか良いと思う。上手く料理すれはヒューマン・ドラマとしても傑作になる可能性があったのではないだろうか。

しかし結果的には不要な登場人物や無駄な設定が多く単なるパニック・ホラーに終わっている。まず学生達や博士の娘を登場させる必然性が無い。さらに博士と娘の間には確執があるが中途半端な設定で親子の心模様が全然描かれていない。

ベースキャンプが物体Xの南極基地を髣髴とさせる造りなのだから博士と研究員だけに登場人物を絞った密室劇にした方が面白いと感じた。特に助手のジェーンは博士の究極の選択に反対する立場なのでその部分を掘り下げた脚本にして欲しかった。

この作品で評価できる点は寄生虫の描写だ。ゴキブリに似た成虫はCGで表現し人体に寄生した卵や孵化した幼虫は特殊メイクを使うなど完成度が高い。腕や腹部に食い込んだ卵や周囲の皮膚の爛れ感、切断した腕の切り口にもぐりこむ幼虫は生々しい。

主演はクルーペン博士役のヴァル・キルマーだが出番は最初と最後しかなく中盤は行方不明状態。その間は娘のエヴリンが主役と言って良く全般的にもエヴリンが物語の中心人物だが、特に博士の娘役である必要がないのは前述の通りだ。

博士の究極の選択は何なのか?ここでは伏せておくがこうまでしないと人間は変わらないと言うことだろうか。しかし喉元過ぎれば熱さ忘れるで結局元に戻る気もする。冒頭でちょっと映るカラスがしっかりとラストのオチに繋がっている。