2016-02-28

悪魔の椅子


2006年製作のイギリス映画。80年代風のゴシック・ホラーと思わせておいてラストにとんでもないオチをつけてしまった残念な作品だ。

ストーリー
廃墟となった精神病院に恋人と一緒に足を踏み入れたニックはそこで不気味な椅子を発見する。恋人がその椅子に座ると急に足枷・首枷が作動して動けなくなり、椅子の内部から飛び出してきた鋭利な金属が身体にめり込んいく。

恋人の姿は突如跡形もなく消えうせニックは殺人の疑いで逮捕されるが精神異常と判定され精神病院に収監される。4年後ニックの話に興味を持った心理学者のウィラード博士が責任を持って監督することを条件にニックを退院させる。

そしてニックと3人の助手を連れてニックの恋人が消えた精神病院に調査に赴く。そこで彼らが遭遇したのは人間を異世界へと誘う恐怖の椅子とそこを徘徊する悪魔の存在だった。

果たして異世界へと足を踏み入れたニックたちに生還の道はあるのか・・・。

レビュー
ここまでのストーリーを読むと結構面白そうな作品かもと期待されるかも知れないが実はその期待を見事に裏切って唖然とさせてくれるトンデモ映画なのだ。

前半から中盤にかけては「ヘルレイザー」を彷彿とさせる映像や演出で楽しませてくれる。椅子が人体を切り裂く残酷描写や異形の悪魔の造型も頑張っている。病院と同じ構造の異世界にはウジやハエが大量にいて迫って来る悪魔の周りにもハエが飛び回り気味が悪い。

悪魔の椅子に座ると椅子に仕込まれた凶器が身体を切り裂き流れ出た血が異世界への扉を開く設定も悪くない。しかし結果的にアイデア止まりで脚本の甘さや演出の稚拙さが足を引っ張っている。特に映像を静止して頻繁に挿入されるニックの独白が邪魔で集中できない。

極めつけは後半のどんでん返しだがこれはもう反則と言って良い。一瞬何が起きたのか呆然とするがその意味が判明した途端大きなため息が出た。これは80年代のホラーを完全に馬鹿にしている。実際ニックの独白にはホラーを馬鹿にした言葉が丁寧にも含まれている。

鑑賞したのは購入した廉価版DVDだが特典としてメイキングが入っている。それを観れば監督や脚本家・スタッフの現場での苦労が良く分かる。特に短期間の撮影中毎日脚本を書き直していたらしくラストのどんでん返しも監督の思いつきで決まったようだ。

これではレベルの高い作品を完成させるには無理があると思ったがクリエイターは結果が全てなので言い訳はできないと思う。「ヘルレイザー」や「死霊のはらわた」も低予算や制約の多い環境で苦労しながら知恵を絞って完成させ後世に残る傑作となったのだ。

雰囲気のあるゴシックホラーと思って観ていたら突然超現実的な残虐フレンチホラーが合体したような稀に見る珍品なので、とてもお勧めはできないが話のネタにはなりそうだ。