2016-11-20

JUKAI-樹海-


2015年製作のアメリカ映画。自殺の名所日本の青木ヶ原樹海を舞台にした幽霊物で好みが合えばかなり楽しめる作品だ。

ストーリー
アメリカで暮らすサラには日本で教師をしている双子の妹ジェスがいる。日本の警察からジェスが青木ヶ原に一人で向かい行方不明であるとの連絡を受けたサラは、双子独特の精神感応によってジェスの生存を確信し捜索のため単身で日本に向け出発する。

宿泊した青木ヶ原の宿で知り合ったオーストラリアの雑誌記者エイデンと、案内役の日本人ミチの協力を得て樹海の中でジェスのテントを見つけるが彼女の姿は見当たらない。ミチの「幻覚に惑わされると危険だ」という忠告を無視しサラとエイデンはテントで夜を明かすことにする。

夜中に物音で目が覚めたサラがテントの外に出ると何故か近くにセーラー服姿の少女が立っている。彼女は「彼を信用しないで」と謎の言葉を残し姿を消してしまう。エイデンに対する不信感が芽生えたサラは口論の末に彼の携帯を取り上げ、テントにいるジェスを写した写真があるのを発見する。

エイデンから逃れるため樹海の中を必死で逃げるサラ。ミチの忠告通り森は彼女に様々な幻覚を見せ苦しめる。果たしてエイデンは本物のサイコなのか、森が見せた幻覚に惑わされているだけなのか。そしてついにエイデンと直接対決する時が来るのだが・・・。

レビュー
日本を舞台にした外国映画は多くの場合「ヘンなニッポン」が描かれているものだが、この作品はしっかりとリサーチしたのかその面での違和感はない。劇中に登場する日本人は正確な日本語を喋るし英語の台詞は日本人が話す英語っぽく聞こえる。

それからアメリカ映画らしからぬ繊細な映像美が感じられ、舞台である森の風景(樹木・苔むした岩・木の蔓など)をあたかも芸術写真のように切り取っている点に好感が持てた。ある意味下手なジャパニーズ・ホラーよりも描写が日本らしいかも知れない。

ストーリー的には現実と幻覚が入り混じっているため少し分かりにくい部分がある。サラとジェスが幼少期に受けた心の傷が描かれるなど不要に感じる演出もあるのだが、森の幽霊たちがそのトラウマを利用して自分達の側に引き込んでいると分かれば納得がいく。

サラとジェスを一人二役で演じるのはナタリー・ドーマー。美人ではないものの存在感がある女優さんだ。エイデン役はテイラー・キニー。中盤から怪しいサイコっぽい男に変身する役を好演している。ミチ役は小澤征悦。彼の濃いめの顔はアメリカ人俳優との競演でも強く印象に残った。

感想としては多少の突っ込み所はあるものの、昨今パワーダウンが甚だしいジャパニーズ・ホラーに少し見習って貰いたいような純日本的幽霊ホラーの佳作だと思う。特にエンドクレジットで日本のわらべうた「とおりゃんせ」をロック風にアレンジした曲を流すセンスに脱帽した。