2016-12-17

リアル・ハント


2008年製作のアメリカ映画。オリジナル・タイトルは「BABYBLUES」。ショッキングな題材だがリアリズムよりエンタテイメントに特化したホラー映画だ。

ストーリー
片田舎の農家で暮らす6人の家族。父親は長距離トラックのドライバーで母親は専業主婦をしている。4人の子供は長男のジミー(10才位)、長女のキャシーと次男のサミー(5才位)、三男は赤ん坊のネイサン(3ヶ月)だ。

母親はネイサンを産んでから精神状態が不安定になり今や症状が悪化してかなり危ない状態にある。そしてキャシーとサミ-の喧嘩が引き金になってついに理性のタガが吹き飛び赤ん坊のネイサンを風呂で溺死させてしまう。

完全に殺人鬼と化した母親は続いてサミーを先の尖った手鏡の柄でメッタ刺しにしジミーとキャシーを殺そうと執拗に追いかけて来る。トウモロコシ畑を逃げ惑い納屋に隠れた2人だがキャシーが見つかり農具のフォークで刺し殺される。

ジミーは必死で狂った母親から逃げながらも弟や妹を殺された怒りをパワーに変えて母親に立ち向かって行く。怪我を負って追い詰められたジミーは起死回生の反撃に打って出るのだが果たしてその結末は・・・。

レビュー
DVDパッケージの説明には母親は「産後うつ」と書いているがこの母親の状態は明らかに記述とは異なる。我が子を無残に殺害するのだから狂人と断言して差し支えないだろう。実際完全に目つきがイッてしまっている。母親を演じるのはコリーン・ポーチという女優さんだが映画が始まった時点で既に目が怖い。

親の子殺しというショッキングな題材をどう演出するか・・・これは作り手が大いに悩む点だろう。この作品は敢えて母親をジェイソンのような殺人鬼として描写しホラー・エンタテイメント化に成功している。さらに農具のフォークや肉切り包丁、コンバインの回転刃などの凶器を効果的に使い盛り上げてくれる。

また80年代のスプラッタ・ホラー映画を思い起こさせる典型的なホラー様式のカメラアングルや照明の使い方をしているので、まるで「13日の金曜日」シリーズを観ているような錯覚を覚えてしまう。ジミー少年が様々な小道具やアイデアで母親に逆襲していく姿はジェイソンに立ち向かうヒロインと全く同じだ。

しかし父親が留守がちだと言うこと以外にも母親が精神的に追い詰められた要因が冒頭部分にさりげなく散りばめられていたり、脚本的にも手抜きが無く映画としての完成度は高い。特に父親のズボンに入っていたマッチなどは芸が細かくさらにそのマッチがアッという使い方をされる演出はお見事だった。

映画は最悪の結末を回避したように見えて実はまた恐怖の日々が甦ることを暗示して終わる。このエンディングもホラー映画のお約束だと言えるし、ジミー少年の表情のアップが「13日の金曜日」のラストでアリスが見せたものと見事に重なった。尺も77分と短めで飽きる事無く最後まで楽しめる良作だ。