2016-12-24

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ


2015年製作のアメリカ映画。若者達が80年代に製作されたホラー映画の世界へ紛れ込んでしまうというSFテイストが特徴的な痛快コメディ・ホラーだ。

ストーリー
マックスは80年代のカルト的ホラー映画「血まみれのキャンプ場」に出演した女優として有名な母親アマンダを3年前に交通事故で亡くした。ある日マックスの友人ガーティの兄で映画館の副支配人をしているダンカンから「血まみれのキャンプ場」上映会にゲスト出演して欲しいと頼まれる。

渋々了解したマックスはガーティ、マックスに気があるクリス、クリスの元彼女ヴィッキー達と劇場に行くが映画の上映中に突然火災が発生する。出口を塞がれたマックス、ガーティ、クリス、ヴィッキー、ダンカンの5人はスクリーンを破って中に飛び込んだ。

目が覚めた彼女達は何故か映画「血まみれのキャンプ場」の世界へと紛れ込んでいた。そしてキャンプ場へ向かう映画の出演者達と出会うのだが、その中には当然マックスの母親アマンダがいてナンシー役を演じている。5人は彼らの車に同乗しキャンプ場へ到着する。

不条理な状況だが若き日の母親に巡り会えたマックスの心は感動と同時に複雑に揺れ動く。母親が演じるナンシーは映画の中で殺人鬼ビリーに惨殺される運命だからだ。自分達が元の世界に戻りナンシーも死なずに済む方法を考えるマックスの前にビリーが立ち塞がる。

レビュー
映画の中の映画「血まみれのキャンプ場」は誰が見ても「13日の金曜日」のパロディだ。キャンブ場でセックスをした若者達が殺人鬼に次々惨殺されるストーリー、殺人鬼が顔に仮面を被り手にナタを持っている設定、そして有名な効果音「キッキッキッキ、マッマッマッマ」まで同じだ。

最初は「血まみれのキャンプ場」オタクのダンカンが説明する通りにストーリーが進んで行く。しかしダンカンがビリーに襲われ殺された時点からストーリーが変化を始める。ファイナル・ガールとはビリーを倒す役のポーラを指すのだが彼女は中盤にあっけなく死んでしまう。

そしてナンシーがマックスの励ましでファイナル・ガールになるべく奮闘し、マックスの友人達も身を捨てて戦う後半部分はスリリングな上に感動すら覚えるドラマチックな展開になっている。特にナンシーとマックスの別れのシーンは不覚にも涙ぐんでしまった。

マックス役はタイッサ・ファーミガ。アマンダとナンシーの二役をこなしたのはマリン・アッカーマン。若いナンシーを演じてもさほど違和感が無く底抜けに陽気なアマンダ役も魅力的だった。また「血まみれのキャンプ場」でカート役を演じたアダム・ディヴァインのキャラが最高だ。

「血まみれのキャンプ場」の中では回想場面は画面が白黒になり殺人鬼に追われる場面はスローモーションになるが、マックス達も身体が同じ状態になって「何コレ?」と叫ぶところなどホラー映画のお約束を大げさに視覚化して観せる手法が大変面白かった。

ラスト・シーンも当然お約束通りで元の世界に戻ったと思ったマックス達がいたのは・・・。80年代のスラッシャー映画の約束事を完全にパロディ化したスタッフのセンスに脱帽だ。残酷描写はないがその点に不満は無くコメディ・ホラー映画でありながら泣かせるお勧めの作品だ。