2015年製作のオーストラリア映画。邦題はセンスに欠けるが中身はスリリングな展開が見所の心霊サスペンスだ。
ストーリー
1年前に愛娘を交通事故で亡くした精神分析医のピーターはシドニーを離れ故郷に近い街で妻のキャロルと二人で暮らしている。かつての恩師ダンカンに患者を紹介してもらい精神カウンセラーとして生計を立てていた。
ある日受け持ちの患者が皆帰った後にエリザベス・バレンタインと名乗る少女が訪ねて来る。彼女は1枚のメモを残して直ぐに姿を消すのだがピーターはメモに書かれた数字が1987年7月12日を示していることに気付く。
気になったピーターは自分の受け持ち患者の記録を調べ彼らが全員その日に死亡していた事実を知り愕然となる。自分は幻覚を見ていたのか?。急いで恩師のダンカンに面会したピーターは彼も現実には存在しない幻だと気付いた。
ピーターは生まれ故郷の田舎町へ向かい実家で元警官の父親ウィリアムと再会する。自分の部屋で新聞の切り抜きを見つけたピーターは1987年7月12日に発生した列車の転覆事故に自分が大きく関与していた事実を思い出す。
エリザベスとこの列車事故で命を落としたピーターの患者達は彼に自首するよう無言の圧力を掛けて来る。ついに彼は警察で女性警察官のバーバラに自らの罪を告白するが偶然にも彼女はピーターの患者エリカの娘だった。
バーバラから当時14才でもあり罪には問われないと言われけじめを付けて霊から解放された筈のピーターだが、エリザベスは彼の前に再び姿を現し幾重にも重なった記憶のベールを剥がして行く。
そしてピーターの記憶が全て甦った時彼は恐ろしい事実と直面することになる。
レビュー
ストーリーはかなり端折って書いたがそれでも長文になってしまった。とても書き切れない程細かい伏線があるためじっくり鑑賞しないと見過ごしてしまい訳が分からなくなる。2度観てなるほどと納得した箇所がいくつもあった。
話の冒頭から既に騙されていることに気付くのは中盤近くになってからで本当に一枚ずつ薄皮を剥がすように主人公の記憶が呼び起こされて行く。真実に辿り着いたと思ったらエリザベスが現れまた次の真実へと導いて行く感じだ。
1年前にピーターの目前で車に撥ねられ死んだ娘イビー。彼女の死にもピーターの過去が絡んでいて霊がそのように誘ったと考えるのが妥当だ。娘の死をキッカケに故郷に近い街に移り住むと恩師のダンカンが待ち受けていたからだ。
元警察官の父親ウィリアムと女警察官バーバラがストーリー後半の重要人物になる。これ以上はネタバレするので書けないがエリザベスは本当に列車事故で死んだのか?が大きな鍵となる。そして最後には大どんでん返しが待ち受けている。
ピーター役はエイドリアン・ブロディ。相変わらず哀しい目の演技が素晴らしい。ダンカン役はサム・ニール。安定の演技で意外な役を好演している。バーバラ役はロビン・マクビーリー。オーストラリア生まれの綺麗な女優さんだ。
映像はヨーロッパ映画のようなしっとりした雰囲気で暗いイメージが全編に漂っている。幽霊の描写はジャパニーズ・ホラーの影響を受けているようで、顔の表情の変化や髪の毛が波打つ様子をCGで表現している点が共通している。
レビューの最初に書いた通り1度観ただけではその良さが分からないと思う。時間がある時にじっくりと腰を据えて観て欲しい。2度鑑賞した時に全ての謎が氷解し余韻に浸る事ができる奥の深い作品だ。