2017-01-29

残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋


2015年製作の日本映画。小野不由美の同名小説の映画化でジワジワと迫ってくる恐怖をドキュメンタリータッチで描いた怪談ミステリーだ。

ストーリー
女流作家の私(名前はない)は心霊や怪談を扱う雑誌向けに短編を書いている。読者から届いた投稿をベースに都市伝説風な怪談にまとめて発表しているのだ。ある日久保さんという名の女子大生から届いた投稿が私の目を引く。

久保さんは自分が住むマンションの寝室から畳を布が擦るような音が聞こえ和服の帯のような物が視界を横切るのを見たそうだ。私はその内容に引っかかるものを感じ過去の投稿から同じマンションで同様の現象が起きていた事実を知る。

しかし現象は同じでも部屋の位置が異なるため過去に久保さんの部屋で自殺等の事件があったという推察は成り立たない。実際に久保さんが不動産屋に確認したところ、そのマンションで過去に事件、事故の類は無かったことが証明される。

私と久保さんは二人で怪現象の正体を探るべく調査を始める。そして久保さんの部屋の前住者が引越し先で首吊り自殺をしていたり、久保さんの隣人が毎日のように公衆電話から架かってくるイタズラ電話に悩まされている等の情報を得る。

二人は怪現象の源はマンションにあるのではなく土地自体にあると考えた。近隣住人やその土地の昔の様子を知る人達から聞き取り調査を行ううちに、この土地はおぞましくも恐ろしい過去を持つ場所であることが徐々に明らかになっていく。

マンションの怪現象は一種類ではなくいくつかのパターンがあり、土地にまつわる事件を時を遡って調べていくと、その時々に起きた恐ろしい事件から想像できる現象とマンションの怪現象は見事に一致した。

そして私の小説仲間である平岡たちの協力を得てついに怪現象の根幹と思われる事件に辿り着くが、穢れが二人とその関係者の身にも纏わりつき始めた。

レビュー
映画のジャンルとしては怪談ミステリと言った感じだろうか。主人公である私の一人称視点で描かれるドキュメンタリータッチの手法が採用されている。ストーリーは割とゆっくりとしたペースで進み過去へと遡って怪現象の源を探り検証して行く淡々としたものだ。

「穢れ」とは何かについて「不浄、汚れ。死・出産・疫病・失火・悪行などによって生じ、災いや罪をもたらすとされる。」と映画の冒頭に説明される。そしてこの穢れは触れた者に災いをもたらすのがポイントで穢れのある場所に住むだけで恐ろしい物を見せたり聞かせたりするのだ。

「呪怨」に良く似ているが呪われた家に関わった人から人へ現在進行形で呪いが連鎖するのが「呪怨」だ。「残穢」はその土地に生じた穢れが住む者に悪しき影響を与えて次なる穢れを産み次の住人もまた・・・つまり穢れが形を変えながら長い時間を掛けて住人に災いをもたらす点が異なる。

久保さんが聞いたのはこの土地に住んでいた女性が和服の帯締めで首を吊り垂れ下がった帯が畳を擦る音だった。この女性は自殺する前に「赤ん坊が床から湧き出してくる」と言っていた。それ以前にこの土地に住んでいた女は自分が産んだ嬰児7体を床下に埋めた罪で逮捕されていた。

主人公達は穢れの根幹と思われる北九州で起こった炭鉱火災事故の記録に辿りつく。事故で焼け死んだ人々の無念の思いが穢れとなり次なる穢れを産んだのか?。炭鉱主の娘が嫁ぎ先(マンションがある土地)に持参した一枚の古い美人画の存在がその疑念を抱かせる。

私役は竹内結子、久保さん役は橋本愛が演じている。また私の小説仲間の平岡を佐々木蔵之介が好演している。実は佐々木蔵之介演じる小説家の平岡はかなり重要な役なのだ。彼が言う「辿って行くと根が一つ。こういう話は業が深いよ」という台詞はとても印象的だった。

怪現象の源を時代を遡りながらコツコツと追っていく丹念なストーリー展開が上手く終盤まで集中して観ることができた。しかしラストにCGの黒い霊や揺れる首吊り死体が姿を現した所で見事に裏切られた。それまで積み上げた想像の中の恐怖が一発で消し飛んでしまった。

それらのシーンはせっかく視覚だけで怖がらせる演出を最小限にしていたのに全てを台無しにしている。この作品の場合ラストは意味深な描写だけに留めて、その後の主人公達に何が起きるのかは観た人の想像に任せるのがベストではなかったかと思う。