2017年制作のアメリカ映画。7つの願いを叶えてくれる箱にまつわる青春物とホラーをブレンドしたような作品。やや小じんまりした印象ながらそれなりに楽しめる佳作だ。
ストーリー
高校生のクレアは父親のジョナサンと2人暮らし。母親のジョアンナは12年前に謎の自殺を遂げている。クレアは愛嬌があって可愛いのだが美人とは言えないし洋服のセンスもあまり良くない。学校でも少し浮いた存在だ。彼女はそんな自分に劣等感を持ち日々苛立ちを感じていた。
ある日、廃品回収で小銭を稼いでいるジョナサンがゴミ箱の中から中国製と思われるアンティークの箱を見つけクレアにプレゼントする。学校で中国語を専攻している彼女は箱の一部に「7つの願い」と文字が彫られていることを知る。ただし古代中国文字のため全文は解読できない。
実はこの箱は持ち主に7つの願いを叶える代償として持ち主に関係ある人の命を奪う呪いの箱だった。しかしクレアはそのことを知る由もなく次々と箱に願いを託してしまう。最初は箱の力に半信半疑だったが徐々にその力を信じ、代償が求められることに薄々気付きながらも手放せない。
彼女の願いと結果、その代償は以下の通りだ。
①願い:学校で犬猿の仲のダーシーが腐ればいい。
結果:ダーシーの顔や足が壊死する。
代償:クレアの愛犬マックスが死ぬ。
②願い:級友のポールに好かれたい。
結果:ポールは彼女と別れてクレアに急接近。
代償:大富豪の伯父オーガストが風呂で事故死。
③願い:伯父の遺産が貰えればいいのに。
結果:遺産がクレアに転がり込み豪邸に住むことに。
代償:向かいに住むミセス・デルーカがディスポーザーに巻き込まれ死亡。
④願い:父親の廃品回収を止めさせたい。
結果:父親は元の職業(サックス奏者)に戻る。
代償:文字の解読を依頼した同級生ライアンのいとこジーナが奇怪な事故死。
⑤願い:学校で一番の人気者になりたい。
結果:学校の皆に注目され好かれる。
代償:親友のメレディスがエレベーターの落下で死亡。
ここまでで5つの願いが叶った。しかし、いとこを亡くし箱の由来を調べたライアンの説得でクレアは箱を手放す決意をする。ところが肝心の箱が忽然と姿を消してしまう。その日から箱の力は消え願いは全てリセットされて伯父の税金滞納で豪邸から追い出される。
学校においても以前の虚しい日々が戻ってきたが、箱を持ち出したのが死んだメレディスとも親しかったクレアの親友ジューンだと分かり言い争いになる。ジューンはクレアのためだと説明するが彼女は力ずくで箱を取り戻し、ライアンの静止を振り切って学校を飛び出す。
自宅に戻ったクレアはパニックに陥り箱に6つ目の願いを告げてしまう。「ママが自殺しなかった人生を」と。願いは叶い母親のジョアンナ、2人の妹と共に未知の幸せな人生が目の前に開けた。
しかし母親の自殺に箱が関係していたことが明らかになり、母親が戻った代償として父親のジョナサンが命を落とした時彼女は箱に最後の願いを告げるのだが。
レビュー
ここで呪いの箱の力やルール、その外観や動きを整理してみる。
- 箱に手を載せ願いを告げれば7つまで叶う
- 箱を手放せば願いの効力は全て失われる。
- 願いを叶えた箱はその代償として持ち主の親しい人(ペット含む)の命を奪う。
- 外観はジャケット画を参照。上から観ると八角形で漢字が彫ってある。割と大きい。
- 普段は錠が掛かり開かないが命を奪う時だけ蓋が自動で開きオルゴールが鳴る。
- 7つの願いを全て叶えた時持ち主の魂を奪う。
しかし、箱の危険性を知ったライアンから忠告を受けても知らぬ存ぜぬを決め込んで箱を手放そうとしないのは利己主義に見える。だがこれは箱が無いと自身が持てない少女の心を巧みに利用している箱の魔力だろう。ライアンが「完全に操られている」とクレアに忠告するシーンもある。
また、母親ジョアンナの自殺に関しては解釈が難しい。映画の冒頭で何故か所持していた呪いの箱を布に包みゴミ箱に捨てたジョアンナ。遊びに行く幼いクレアを見送る彼女の顔は清々しく見えた。その直後に彼女は首吊り自殺をするのだが何故だろう。
実はジョナサンがクレアに母親の死について語るシーンがある。「ママは子供の頃辛い思いをした。その過去に耐えられなくなったのかも」と。彼女は過去に箱の代償で大切な人を亡くした。苦しみから逃れるため死を覚悟した今、クレアが触れないよう箱を処分することにしたのでは?。
これはあくまで私見なので見当違いかも知れない。ジョナサンさえもハッキリした自殺の原因を知らないし、箱はジョアンナが厳重に保管していたと思われる。しかし、巡り巡って箱はクレアの元に辿り着いたのだからもし解釈が当たっているなら皮肉な話だ。
さてこの作品の見どころは代償として命を落とす人の死に様だろう。誰もが「ファイナル・デスティネーション」を思い起こすと思う。残酷度は超低いが俗に「ピタゴラ・スイッチ」と呼ばれるハラハラさせる仕掛けが再現されている。
さらに平行「ピタゴラ・スイッチ」とでも呼べばいいのか、いったいどちらが死ぬんだ的な演出が大変面白かった。この演出は一箇所だけだがもっとやっても良かった気がする。残酷度だけを上げるとモロ「ファイナル~」のコピーになるので、ここはこの手法で勝負して欲しかった。
俳優陣については、クレア役は「死霊館」に出演しているジョーイ・キング。腫れぼったい唇が特徴だ。またミセス・デルーカ役に懐かしいシェリリン・フェンが扮している。個人的には「ツイン・ピークス」のオードリー・ホーン=彼女である。
因みに本作はあまり評価が高くないようだ。確かに中途半端さは認めるが尺が90分で丁度良く、テンポも悪くないのでサラッと観れてしまう。残酷度を求める方には物足りないが青春物として楽しめばホラー要素とのバランスは取れている。
7つの願いが叶ったクレアは呪いの箱に魂を奪われる訳だが、パンチの効いた結末で切れ味の良い締め括りとなっている。またお洒落なエンド・ロールを最後まで観ると追加のオチが付いているのでお見逃しなく。