2013年制作のアメリカ映画。モンスター映画としても十分面白いのだが凶器が巨大な斧なので人体破壊マニアが泣いて歓びそうな残酷度MAXの痛快仕様だ。
ストーリー
舞台はミネソタ州矯正省の出張所。ここで受刑者が初犯者更生プログラムを受ければ出所カードが貰えて刑務所から出ることができる。プログラムを受けるのはマーティン、ザック、トリッシュ、ローザ、クレアの男2人女3人だ。指導するのはホーク刑務官で女性カウンセラーのサラが同行する。
プログラムは山奥のキャンプ場で実施し一週間泊まり込む。到着した翌日の早朝から早速ハードな山歩きが始まり山頂付近でやっと休憩になった。ザックとマーティンが周辺を探索に出掛けると開けた場所で動物の骨を多数見つける。ザックがその中にあった牛の角を記念にするためリュックに入れた。
彼らが下山を始めた頃、山頂に一体の巨人が現れる。巨人は牛の角が無くなっていることを知り怒りの雄叫びを上げる。巨人は彼らに迫りトリッシュとホーク刑務官が巨大な斧で惨殺される。残った5人は何とかキャンプ場に戻り小屋に籠城するが、唯一の逃亡手段である車を巨人に持ち去られてしまう。
5人がどうやって脱出するか相談している時、小屋にこの山に住むミークスという名の老人が訪ねてくる。彼は「おまえらはヤツを怒らせるどんなマズイことをしたんだ」と激高するのだ。クレアが牛の角を見せると老人は巨人の素性について話し始めた。巨人は伝説の怪物ポール・バニアンだったのだ。
1800年代の終わり頃バニアン家と雇い人はこの山で木材の伐採をして暮らしていた。ラーチ・バニアンの息子ポールは先天性の奇形で身体が異常に大きかった。医者は普通の人間の二倍以上の大きさに成長し3倍以上長生きすると言う。ポールが5才の時には身長が180cmになっていた。
ある時、雇い人の親方がポールの親友の青い牛ベイブを射殺し皆で食べた。それを見たポールは狂乱し雇い人達を皆殺しに。彼は町の人々に捕らえられ市中引き回しのうえ山の坑道に閉じ込められた。しかし何とか山頂に逃げて洞窟を住処とし当時より遥かに巨大な姿となって生き延びているのだ。
ミークスはポールの怒りを鎮めるにはベイブの角を元の場所に戻すしか無いと言う。ザックは角を持って小屋を飛び出し森に向かって投げるが、角で胸を貫かれてポールに連れ去られる。ミークスはこれでヤツの怒りは収まっただろうと皆を安心させるが彼の復讐はまだ終わっていなかった。
夜が明けてクレアの父親で保安官のレイは山中でホーク刑務官の死体を発見する。応援を依頼し慌ててキャンプ場に向かうがその頃には既にポールが小屋を破壊し大暴れをしていた。小屋でローザが死に山中でマーティンとミークスも死亡した。果たして残る3人は生き残る事ができるのか。
まずこの作品の主役ポール・バニアンについて。外観はとにかく大きくて2階建て住宅の屋根位の身長だろうか。キャンプ小屋の屋根を壊すと穴の結構上から見下ろして来る。上半身は裸でゴツゴツした筋肉。下半身は粗末な布をズボン状に纏っている。顔は歪に変形しており額が広く顎髭がボウボウだ。
ポールが普通の人間や建物と一緒に映る時は当然画像合成しているが、CGを使用しているシーンは少ないかも知れない。敢えてポールをクロマキーで別撮りして合成し昔の怪獣映画の雰囲気を出しているのではないかと思う。小屋がミニチュアだったり人間が人形だったりしてチャチだけど面白い。
設定ではいくら巨大でもポールはあくまで人間なのだが雰囲気はモロに怪獣映画の着ぐるみである。だから怪獣映画好きには堪らない味がある作品だ。微妙にスケールのバラツキがあったりB級感丸出しの特殊効果ではあるが、それが製作者の狙ったものであればしてやったりの大成功と言えるだろう。
また、本作の特殊効果はロバート・カーツマンの工房が手掛けている。人体破壊(身体を縦に真っ二つ、横から真っ二つ、首や腕の切断多数)はお手の物だ。おまけにロバート・カーツマンは製作者にも名を連ねている。これは「クライモリ」の制作にスタン・ウィンストンが加わっていたのと似ている。
舞台や人物設定に関してもキャンプ場の小屋は「13日の金曜日」に出て来るクリスタル・レイクの小屋そっくりだし、山に住むミークスはあの予言ジイサンと被るなどマニア心をくすぐる。ホーク刑務官の軍隊口調は何故か「フルメタル・ジャケット」のリー・アーメイ扮する鬼軍曹にそっくりだ。
「クライモリ」の無線塔に似た施設が映ったり他にもニヤリとするシーンはあるのだが、ラストシーンは「キングコング対ゴジラ」「モスラ対ゴジラ」のゴジラと重なってしまった。これはちょっとこじつけだろうか。怪獣映画とスプラッタホラー映画が合体したこの作品、管理人の超お勧めである。