2019-06-23

フォロイング


2017年制作のタイ・アメリカ合作映画。タイのバンコクを舞台に日本人老婆の霊がヒロインに取り憑く心霊ホラー。B級作品だが平均点レベルには達しているまずまずの佳作だった。

ストーリー
ジムとジュリーのカップルは旅行でタイのバンコクにやって来た。空港出口でタクシー兼ガイドのゴゴを雇いまずはホテルに到着。その後市内観光と食事を済ませてホテルに戻ると、ロビーで英国人のロバートとビリーに声をかけられる。愛想の良い彼らに誘われて一緒に飲みに行くことに。

賑やかな歓楽街で飲み歩いた後ロバートがジムとジュリーに面白い所があるから行こうと誘う。程近い田舎に珍しい祠があるのだそうだ。タイには到るところに小さな家型をした祠がある。これらは霊の家と呼ばれ人々は供物を捧げて霊の機嫌を取り祠の外に出ないようにしているのだ。

祠に興味があるジュリーは二つ返事でロバート達の提案に乗り、彼らの車で人気のない林の奥へと辿り着いた。そこは祠の墓場と呼ばれ打ち捨てられた祠が林立してる場所だ。ロバートはその内の1つの祠に祀られた小像を記念に持って帰るようジュリーに勧める。

ジュリーが小像を手に取ると何故か彼女のスカーフの一部が首に巻かれている。そして突如祠の上に白髪の老婆が現れ彼女はショックで腰を抜かし呆然自失に。ジムは慌てて彼女の元に走るがロバートとビリーは2人を置き去りにして車で去ってしまう。

ジムはジュリーを支えながら道まで出てゴゴに電話をし迎えを頼む。到着したゴゴは近くにある自分のおばの家に2人を運ぶが、ジュリーを見たゴゴのおばは「ワタベ!」と叫び祈り始める。ジムがゴゴに何事かと聞くとタイには古くからの言い伝えがあると言う。

昔タイ人に嫁いだ日本人女性が若い女と浮気した夫に腹を立て自宅に放火し焼け死んでしまった。彼女は不幸な霊ワタベとなり今でも若い女性を恨んでいる。ジュリーが小像を取った祠は彼女の物だったのだ。ジュリーはワタベに魂を奪われ霊界に連れて行かれるのだと。

ホテルに戻ったジュリーは頻繁に幻覚に襲われて錯乱するため急遽ジムが病院に連れて行く。そこで医師から彼女と同じ症状の英国人女性がいたが今朝退院したこと、彼女には2人の英国人男性が付き添っていて空港に向かったことを聞く。早速ゴゴの車で空港へ急ぐジム。

空港でロバート達を見つけたジムは一悶着の末リノという男を紹介される。怪しげな店で会ったリノは「彼女を救いたければ別の人間に霊を転移させろ」と言うのだ。一旦腹を決めたジムだがロバートと同じ真似はできず再度リノの店に乗り込み銃で脅して別の方法を聞き出す。

その方法は呪術師に頼み霊を祓って貰うことだった。ジム、ジュリー、ゴゴ、リノの4人はボートで河を進み奥地にある呪術師の元に辿り着くが。

レビュー
DVDジャケットの表紙に「イット・フォローズ」のプロデューサー云々と言う文言があるが、このプロデューサー名が調べても良く分からない。販売元がアルバトロスなので例のジャケット詐欺かも知れない。どちらにしても本作と「イット・フォローズ」にストーリー的関連性は無い。

ストーリーでざっくり説明したが、まずロバートとビリーの連れの女性がワタベに取り憑かれる。映画の冒頭にこの女性が老婆に襲われる幻覚を見るシーンがある。そしてロバート達がリノのアドバイス通り霊を転移させる人間を探していたら、そこに現れたのがジュリーと言う訳だ。

また祠の小像には転移させる人間の持ち物を添える必要があるらしい。ジュリーのスカーフは歓楽街にいる時ビリーがスキを見て懐に入れていた。この小像は他の祠の供物と同じで霊が外に出ないよう祀ってあると考えて良いだろう。だからそれを盗んだ者は霊に呪われてしまうのだ。

そしてワタベに取り憑かれた人間の余命は3日。その間絶えず老婆の幻覚に悩まされ徐々に精気を奪われていく。老婆の出現パターンは様々で貞子そっくりのカクカク歩きで接近する・床から生えて来る・空中を浮遊する・壁や天井を這ったりするなど。しかしどれも新鮮味には欠ける印象だ。

相手に顔を近づけて来て長い爪の生えた指を口の中に突っ込んで来るのが必殺技か。しかし正直全然怖くない。幻覚の中には迷路のような暗い廊下や炎に包まれた部屋などが現れる。老婆が廊下の奥でうずくまっていたりヒロインの持つライトが点いたり消えたり、全て教科書通りなのだ。

しかし4人が呪術師の元に車で向かう途中の道路で交通事故の現場に遭遇し、布が掛けられた死体がゆっくり起き上がるのをジュリーが見るシーンは怖かった。車に轢かれた子供の死体が車の窓をコンコンと叩いたり・・・当然幻覚だがドキッとする映像だった。これは彼女が徐々に霊界へと引き込まれている証だと思われる。

ところで霊を日本人の老婆にする必要性があるのだろうか。タイ人で悲惨な死に方をした女性の方も多いと思うし、そちらの方が土着性があってリアルに感じられる。老婆の顔は特殊メイクをしているので辛うじて東洋人だと分かるレベルだしホントなぜ日本人なんだろう?。

さて俳優陣だが、ジュリー役はスカウト・テイラー・コンプトン嬢。管理人の好きな「イット・フォローズ」のマイカ・モンロー嬢に雰囲気が似ていて、二の腕のポッチャリ感&幼児体形もそっくり。本作ではヌードも披露しているので作品の評価はグンとアップだ。

あとビックリしたのがロバート役のラッセル・ジェフリー・バンクス。過去に本ブログで紹介した「WHO'S WATCHING OLIVER」のオリバー君だ。顔の雰囲気が違うのでまさかと思ったが独特の喋り方で気付いた。変幻自在の表現力がある俳優さんだ。

最後に本作のお勧め度だが過度に期待しない限り十分鑑賞に耐える内容だと思う。恐怖演出がジャパニーズ・ホラー的だったり老婆の個性不足は否めないが、全編を通して大きな破綻もなく映像・脚本・美術・音楽全ておいて平均点レベルでバランスが取れている。

書き忘れたが現地ガイドのゴゴが大変魅力的なキャラクターで印象深かった。