2019-06-01
ビジター
2012年制作のアメリカ映画。ジャンル分けが難しく下手にジャンルを書いてしまうと一発ネタバレとなりそうな作品。どんでん返しが好きな人向けの映画と言えるだろう。
ストーリー
小説家のジョナサンと妻のアディーは人里離れた場所で広い敷地を持つ立派な家に住んでいる。1年前に3才の息子トーマスが敷地内の池で溺死し夫婦は失意の底から這い上がれないでいた。特に妻のアディは酒の量が増え精神的に不安定な状態だ。そのため夫婦関係はギクシャクしている。
ある日の夜中、若い女性が助けを求めてジョナサン家を訪ねて来る。彼女の名はレイチェル。レイチェルの話によると「表の道を車で走っているとタイヤがパンクした。変な音と共にガスマスクをした複数の男が現れたので慌ててここまで逃げて来た」とのこと。
ジョナサンが現場まで行って見ると、パンクしたワーゲンが停まっていて側には釘を多数打ち込んだ長いゴムシートが落ちていた。どうやら故意にパンクさせた者がいるようだ。家に戻りレイチェルに報告すると怖いので朝まで置いて欲しいと言う。アディーは渋々だったが彼女を一晩泊めることに。
アディーは馴々しいレイチェルに不信感を覚えていた。彼女は夫の職業や息子が死んだことも知っていた。そして行動がどこか不自然なのだ。家の中を勝手に歩き回り大きい音で音楽を聞いたり、息子の部屋にあるベビーモニターを廊下に置いておいたり。アディーが彼女に聞いても知らないと言う。
その時突然停電が起こり何処からか侵入したガスマスクの男にレイチャルが連れ去られる。さらに2人の男が家に侵入しようとしたため扉や窓に施錠をし夫婦は立て籠もることに。しかし強引に侵入を試みる男達に対抗するため、ジョナサンは離れの仕事場に単身銃を取りに行く。
しかし仕事場の金庫の中に銃は無かった。再び母屋に戻ったジョナサンはアディと合流し車庫に移動して車での脱出を試みる。ここでも車のエンジンが掛からない。そこへガスマスクの男が現れるがジョナサンの攻撃で気絶する。ガスマスクを外すと何と正体は連れ去られた筈のレイチェルだった。
訳が分からないままジョナサンとアディーは森に向かって逃げるが、森の中でバラック小屋を見つける。中に入るとモニターや電子機器が並び一家の写真や襲撃の計画図などが所狭しと置いてあった。モニター画面には母屋の各部屋の様子が映っており以前から監視されていたことが分かる。
男達が戻って来たため2人は森から離れ一旦近隣の納屋に隠れた。ジョナサンはアディーを残してレイチェルのワーゲンを取りに向かうが、大きな悲鳴を聞き急いで納屋に引き返す。しかし既にアディーの姿は無く代わりにベビーモニターが置いてあった。
モニターにはレイチェル達に囲まれ池の側にいるアディーの姿が・・・。慌てて池に駆けつけたジョナサンだがアディーの口から衝撃の事実を知らされる。
レビュー
この作品も前回紹介した「ロスト・メモリー」と同様にトリックが仕掛けられている。特に今回は一発大逆転のどんでん返しなのでまたレビューが難しいと弱音を吐きそうだ。
まずトッド・レヴィン監督はフェアーな描写に拘っているのが分かる。あちこちにあからさまに謎を解くヒントが散りばめられていて気付いてくれと言わんばかりだ。特に開始早々の数秒間の描写、このヒントだけですぐにトリックを見破られても可笑しくない。
しかし、情けなくも管理人はこのヒントが持つ意味を深く考えなかった。だから結末を知った時「しまった~やられた!」となって仰け反った。この点は管理人がボケているだけでなく、あまりに正々堂々と見せられると逆に疑問を感じない人間の心理を上手く突いていると思う。
そしてレイチェルの表情や言葉がとても意味深だ。普通初めて会った人にあまり立ち入ったことは聞かない。特に息子の死については知っていても聞かない筈だ。しかし全てを見透かしたような視線でストレートに聞いて来る。この描写がまず最初に何となく違和感を感じる部分だ。
ところがガスマスクの男達が現れてから雰囲気が一変する。目的は不明だが明らかに家に侵入し夫婦に危害を加えようとしているのが伝わって来る。窓の外からアディーの様子をじっと伺う様子など絵的にも怖い。皆ゆっくりと歩き慌てる事も無く不意の反撃にも動じない。
ジョナサンの家は敷地が広く母屋以外に離れやワインセラー、車庫などが点在しているので、ジョナサン単独でもアディーと一緒でもあちこち大移動して必死に逃げ回っている印象だ。もう少し移動場所をコンパクトにまとめた方が中盤から終盤の行ったり来たりするドタバタ感が解消されたかも知れない。
しかしこの追われる恐怖と脱出の困難さが夫婦の絆を元の状態へ戻し互いに思いやる気持ちを強めたことは間違いない。そして物語は一気に結末へと駒を進める。アディーの告白によるどんでん返しには当然驚いたが、それに続くラストシーンでおそらくレイチェルの目だけに映ったある光景が胸を熱くした。
それから男達が小型のテスターのような電子機器を持っているのだが、表示部分に細かい波形が出ている。これが何をする機器なのか実は最後に分かる。ある瞬間に波形がスッと消え観ていて何とも切ない思いがした。同様に多くのさりげない描写が示唆する意味は結末と共に全て明らかになる。
さてレイチェル役を演じたのはサラ・パクストンだが個人的にとても気になる女優さんだ。彼女が出演しているからという理由で観る映画も多い。本作でも下着姿のサービスがあってもうメロメロである。女優の好みで作品の評価が簡単に上下するので管理人のレビューを信じてはいけない。
ところでこの作品はあまり評価が芳しくないようだ。その理由はおそらく一発逆転のネタがある有名な作品のパクリだからかも知れない。例えそうだとしてもスタイルの似た作品は数多く存在する訳で、それらが全て駄作とは言えないだろう。
要は骨格は定番のネタでも肉付けする監督の才覚によって作品は良くも悪くもなると言うことだ。管理人はサラ・パクストン好きを差し引いても本作は傑作だと信じている。それだけの評価をしたくなる素晴らしいラストシーンだった。
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