2015-10-25

ハーモニー・オブ・ザ・デッド


2015年製作のスペイン・ハンガリー合作映画。タイトルからコメディ・ホラーを想像してしまうが大変真面目に作られたホラー&ヒューマン・ドラマだ。

ストーリー
アメリカ中部の都市ハーモニーでは住民がゾンビ化し感染が広がって人間が滅びようとしていた。突如異常寒波に見舞われ雪一色となった街からはゾンビが絶滅したようにその姿を消してしまう。

9年後、生き残ったジャックと娘のルーは町外れの民家で暮らしていた。そして隣家にはパトリックが犬と一緒に住んでいる。彼らには交流は無くジャックとパトリックの間には過去に何らかの因縁があった雰囲気が漂う。

ある日パトリックが街に食料を調達に行った際新種と思われる異形のゾンビに遭遇する。パトリックを追って来たゾンビと家の前で格闘になり彼はゾンビを捕獲する事に成功した。

ゾンビが生き残っているとしたら3人の生命が脅かされる事態となるため、ジャックとパトリックは因縁を捨て共闘する事にする。早速戦いに備えて武器や食料を調達に行った街で彼らは人間の若い女を見つけ家に連れ帰る。ゾンビが鳴き声で仲間を呼ぶ事を知る若い女は捕獲されたゾンビを見るなり射殺するが、時既に遅く4人はゾンビの群れに囲まれてしまう。

レビュー
この作品の見所はルー役のクイン・マッコルガンの演技に尽きると思う。役柄は10歳前の少女なのだが、かわいくて利発で健気な女の子を繊細な演技で演じ切り、その魅力は惚れ惚れするほど素晴らしいものだった。彼女の存在がこの作品のレベルを引き上げていると言って良いだろう。

また、ルーを見守る2人の男優も味のある魅力を持っている。2人の因縁はルーの亡き母親に関係があるのだが敢えてそこは伏せておく。ただラストに大きな感動を呼ぶ逸話である事は間違いない。

新種のゾンビの特徴だが体毛が無く全身が真っ白で目が見えない。その代わり聴力が抜群に良いのだ。このゾンビ、どう見ても「ディセント」の地底人にそっくり。これはパクリと言われても仕方ないだろう。

対ゾンビ戦も今ひとつアクション的な盛り上がりに欠け残酷描写は殆どない。監督のミゲル・アンヘル・ビバスはアクション演出が不得手なのかも知れない。その代わりドラマ部分の演出や映像表現はかなりハイセンスなものだった。

こく普通のゾンビ映画を期待するとガッカリする思うが良質なドラマと映像美を体験できる秀作だ。可愛いクイン・マッコルガンを観るだけでも充分価値があると思う。