2015-10-03

記憶探偵と鍵のかかった少女


2014年製作のアメリカ・スペイン合作映画。ヨーロッパ的な陰影のある映像が魅力のサスペンスだ。

ストーリー
記憶探偵とは人の記憶を辿りそこに隠された真実を見つける探偵の事。催眠術とは違い手を握った相手の記憶をその場に居るかのように脳裏に映し出す事が出来る。言ってみれば超能力の一種だろうか。

記憶探偵のジョンは富豪の一人娘・アナの調査を担当する事になる。アナは重度の拒食症で彼女の母親と継父が記憶探偵に助けを求めて来たのだ。

ジョンがアナの記憶を辿って行くと、高校の同級生にイジメを受けたり変態教師に半裸写真を撮られたり母親にペーパーナイフで掌を切りつけられたりと、彼女が過去に精神的虐待を受けた可哀想な少女だと分かる。

しかし、実際に彼女と関わった人物に聞き取り調査をすると、イジメた少女はアナに毒殺されそうになり疑われた彼女は親の力で不起訴になったとか、刑務所送りになった変態教師は「アナに嵌められた」と彼女の記憶とは異なる証言をする。

アナの記憶と現実とのギャップに疑問を抱きながらも、彼女を信じて調査を終えたジョンにアナから助けを求める電話が掛かって来る。慌てて駆けつけたジョンを待ち受けていたのは彼が思ってもいなかった過酷な現実だった。

レビュー
終盤明かされるトリックに重点を置きすぎて細部の詰めが甘く脚本が優れているとはお世辞にも言えなかった。伏線らしき描写が色々出てくるが殆ど回収される事無く謎を残したまま映画は終わってしまうし、サスペンスにとって重要な動機に曖昧さが残る点もマイナスだ。

映像的にはしっとりとした味のある重厚感が素晴らしく、俳優もジョン役のマーク・ストロング、アナ役のタイッサ・ファーミガの好演が光るだけに余計残念な思いがした。

監督のホルヘ・ドラドはこのトリックに余程こだわりがあったのだろうか。その気持ちも分かる優れたトリックだが明かされてしまえばそれまでなのでもっとディテールに目を向けて欲しかった。

トリックが明かされるまでの緊張感はなかなかの物だったのに、その後急に失速して尻すぼみになってしまった非常に惜しい作品だと思う。