2015-12-06

ヘルハザード 禁断の黙示録


1991年製作のアメリカ映画。「エイリアン」の脚本「バタリアン」の監督として有名なダン・オバノン監督作品。今回HDリマスター版での初BD化が実現した。

ストーリー
私立探偵のジョンはクレアという名の美女から夫のチャールズ・ウォードに関する調査を依頼される。チャールズは名門出身の資産家で科学者でもあるのだが、遠い親戚からジョセフ・カーウィンなる人物のカバンが届いた日から一心不乱に何かの研究に没頭し始める。

チャールズはついにクレアと住む屋敷を出て人里離れた場所にある農家を借りて籠ってしまう。そして連日業者から大量の牛肉と血液を仕入れ、農家の周辺に腐臭を漂わせながら得体の知れない怪しい研究を続けているのだ。

ジョンの報告を受けたクレアは農家を訪ねるが、そこには形相が変わり別人のようになったチャールズがいた。クレアは彼を強制的に精神病院に入院させ、ジョンと一緒に農家を探索したところ地下に隠された実験室でおぞましい事実を知ることになる。

それは常人の想像を遥かに超えた死体蘇生の研究と、その結果生まれた異形の怪物達の存在だった。

レビュー
この作品はH・P・ラヴクラフトの「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を原作にしている。かなり原作に忠実に映画化したようで重厚なゴシック・ホラーの雰囲気が全編に漂っている。その独特の緊張感と不気味さはオープニング早々からエンディングまで途切れる事がなかった。

今回鑑賞して改めて感じたのは映画の雰囲気がクライブ・バーカー監督の「ヘル・レイザー」に良く似ているという事だ。ストーリー的にも「蘇る」というキーワードが共通しているし、特に荘厳なストリングスをフィーチャーした音楽はクリストファー・ヤングの作風にそっくりだ。

音楽担当はリチャード・バンドだが、彼は「死霊のしたたり」のオープニング・テーマでも「サイコ」のパクリを堂々とやっていたので確信犯とも思える。しかし、その音楽がこの作品の雰囲気にピッタリ合ってかなりの効果を挙げているので結果オーライと言ったところだろうか。

異形のクリーチャーを造型したのはトッド・マスターズ。クリーチャー達の血みどろ・ヌメヌメ感は非情に生々しくて不気味と言う表現がピッタリだ。おそらく低予算であったと思われるが特殊メイクとストップ・モーションを組み合わせた手法を駆使している。ラストには「ヘル・レイザー」そっくりの視覚効果が出てきてニヤリとしてしまった。

また、俳優ではチャールス・ウォードとジョセフ・カーウィンの二役を演じたクリス・サランドンの演技が素晴らしかった。何故二役なのかはネタばれに繋がるので説明しないが、後半邪悪なキャラクターに変わってからの表情や台詞まわしには圧倒的な存在感があった。

この作品は過去にVHS・レーザーディスクでソフト化されて以来DVD化される事なく永らく埋もれていた幻の傑作だ。ダン・オバノンの名を聞くだけで感慨深いものがあって、ある年代以上のホラー映画ファンなら涙なしには観れないはずだ。この作品の存在を初めて知ったという人にもぜひ観て貰いたいと思う。