2017-06-26

デスドール


2010年製作のオーストラリア映画。呪い人形を作ることができる不思議な箱を使って行われる連続殺人を描いたサスペンス・ホラー映画だ。

ストーリー
大学生のベンは2年前に交通事故で古美術商の父親サミュエルを亡くしている。既に遺産の相続は済んでいたが父親の倉庫に眠っていた古風なデザインの箱が見つかり弁護士がベンの元へに届けに来る。箱には「ル・ヴォードゥ・モール」と書かれた銘版と複雑な文様のエンブレムが嵌めこまれていた。

ベンは大学の考古学担当の教授に箱の正体を調べて貰うが、とうやら19世紀にルービンスタインという機械職人によって作られた「復讐の道具」らしいことが分かる。そんな時ベンの兄マーカスが久しぶりに訪ねて来る。ベンはマーカスの素行不良が原因で父親が死んだと彼を恨んでいて仲直りがしたいマーカスを冷たく突き放してしまう。

ベンは大学でパーティが開かれた夜、箱を彼の友人達に披露するのだが翌日箱が行方不明になってしまう。そしてベンの友人の一人ライアンが身体を切り刻まれた死体で発見され、検視のカメラマンをしているマーカスからその事実を知らされる。その後もベンの友人のネルソンとイザベルが奇怪で悲惨な死を遂げる。

マーカスは検視官のコンピュータでライアン達と似た死因の事例を検索しある人物に辿り着く。その人物は10年前に殺害されたロバートという名の商人で何と父親サミュエルの知人だった。箱の所有者だった父と殺されたロバート、二人の関係を調べるマーカスとベンにも殺人者の手が伸びていた。

レビュー
この作品の面白いところは日本の呪いの藁人形のような人形を作る機械仕掛けのアンティークな箱の存在だろう。「ル・ヴォードゥ・モール」という名のこの箱、上面のエンブレムに復讐を企てる者の血と溶けた蝋を流し込んで取っ手を回すと、内部で歯車が作動して箱の側面の引き出しから小さな蝋人形が出てくる。

この蝋人形に焼けた針を刺したり手足をもぎ取ると呪いの対象者が同じ死に方をするのだ。因みに箱の上面には紙を入れるトレイが飛び出す仕掛けがありここに呪いの対象者の写真を入れる。針や取っ手を仕舞う引き出しも付いていて高い機能性と神秘的なデザインが合体した芸術的な「復讐の道具」と言えるだろう。

残酷描写はかなり強烈で切り刻まれたり手足をもがれたり目を潰されたりと観ていて痛い描写が多い。特に焼けた針を使って蝋人形を刺したり切ったりした場合は被害者の受ける傷は焼け焦げたような深いものとなり、検視官が感電した時の跡に似ていると表現する。これがマーカスに大きなヒントを与えるのだが・・・。

ちゃんと犯人探しの要素が含まれているのでサスペンス映画としてもそこそこ楽しめる。コイツが怪しい的な目くらましを最初に提示したりして上手いと思わせるところもある。しかし後半になると呪い人形の出番が無くなり突然あまりにも予想外な犯人が姿を現すのは演出面で惜しいと感じる部分だ。

そして何よりも犯人が罪の無いベンの友人達を殺害する必要があったのか?動機面でかなり疑問が残る。ちょいネタバレになってしまうがターゲットはベンとマーカスだけ、もしくはベンが思いを寄せるメアリーまでで良かったのでは?。あと犯人が呪い箱の使い方を最初から知っていたのは何故なんだろう?と思った。

最近かなり脱力するC級ホラーを立て続けに観たせいかそんな作品に比べれば真面目に作られた良作だと思った。兄弟が絆を取り戻すドラマ部分も好印象だったし残酷描写の多さもプラスして突っ込み所に拘らなければそれなりに楽しめる作品だ。