2008年製作のアメリカ映画。原作はクライヴ・バーカーの同名短編で監督は「ヴァーサス」「あずみ」の北村龍平だ。
ストーリー
ニューヨークに住む写真家レオンはある夜チンピラに絡まれている若い日本人女性を助ける。翌日新聞でその女性が行方不明になった事を知り前日撮った写真を現像して見ると、彼女が地下鉄に乗った瞬間の写真に扉を押さえる手が写っていた。
数日後夜の街に出たレオンは地下鉄の階段を昇ってくる大男に出会う。そしてこの不気味な大男マホガニーこそ事件の犯人だと直感する。翌日彼を尾行すると昼間は精肉工場で働き夜になるとホテルを出て地下鉄に乗る事が分かった。
マホガニーを追い写真を撮り続けるレオンはいつしか自分を見失い血と肉への欲求に取り憑かれる。ある夜覚悟を決めて彼と同じ地下鉄に乗ったレオンは、マホガニーが乗った車両で繰り広げられる恐ろしい光景を目撃するのだった。
レビュー
北村龍平監督のハリウッド進出第一作だが興行的に全く振るわず公開から3年近く経ってやっとDVD化された不遇の作品だ。しかし内容がそんなに酷い訳ではなくここまで無視された理由が分からない。
マホガニーは巨大な肉たたきを乗客の頭部目掛けて容赦なく叩き込む。マホガニー役のヴィニー・ジョーンズは顔色ひとつ変えず淡々と殺戮を続ける殺人鬼にぴったりの外観だ。規則正しい死体や遺留品の処理など生真面目な所も良く似合う。
グロ描写はかなり強烈でスプラッタ・ホラーマニアも納得の血の量だ。CGと特殊メイクを上手く組合わせ大量に飛び散るスローモーションの血飛沫と、千切れた首目線の独創的なカメラアングルに監督のセンスの良さを感じた。
主演のレオン役はブレイク前のブラッドリー・クーパーだ。ギャラリーのオーナー役で懐かしいブルック・シールズも出ている。お年を召された感は否めないが今後も女優として活躍して欲しい。
地下鉄の車両が辿り着いた地底の禍々しい空間と異形の物たち。ある意味マホガニーより恐ろしい運転士とその正体、そしてレオンの末路。クライヴ・バーカーの世界観を見事に再現した北村監督に拍手だ。